例えば、取引において契約当事者の一方が約束通りに債務を履行(金銭の支払いなど)
せず、話し合いが拗れて解決が難しい状況になった場合、強制執行という手段で相手方
の財産を差し押さえて、そこから債権の回収を図る方法があります。
通常、この方法で債権回収を図るためには債権者は裁判を起こし、勝訴判決で強制執行
が認められる判決が確定しなければなりません。

裁判でこの確定判決を得るまでには時間もかかり、またその費用も馬鹿になりません。

ところが、公証人が作成する公正証書には、裁判所の確定判決と同じ執行力を持つもの
があります。
公正証書に基づく強制執行よって債権回収を図れば、時間および費用が節約できます。

但し、すべての公正証書に強制執行が認められるわけではありません。
強制執行できる公正証書には、次の2つの条件が備わっている必要があります。

 ■ 公正証書に記載された債務内容が「金銭の一定額の支払いを約束した場合、
    代
替物
もしくは有価証券の一定の数量の給付を約束した場合」であること

 ■ 公正証書に債務者が「強制執行されてもかまわない旨の記載(これを執行
    認諾約款
といいます。)」があること

ところで、強制執行できる条件を備えた公正証書が有るからといって、債権者が直接に
債務者に対して強制執行できるわけではありません。

強制執行は法律に従って適正に行わなければなりませんので、執行機関として裁判所
執行官が法律で定められています。

債権者が強制執行によって債権の回収を図りたいときは、一定の手続に従って裁判所
または執行官に申立てをして、強制執行してもらうことになります。

裁判所または執行官はこの申立てを受けて、強制執行の手続を進めていきます。

強制執行の申立て機関が裁判所になるか執行官になるかは、債権者が債務者のどの
財産に強制執行を申立てるかによって決まります。
目的の財産不動産(土地・建物など)、債権(預貯金など)なら裁判所に、動産
(家財など)なら執行官に申立てることになります。

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