【公正証書作成の事前準備】

公正証書の作成には、十分な準備が必要です。
事前に十分な準備をしないと、公証役場への出頭が2度、3度となってしまいます。

公証人に公正証書の嘱託(作成を依頼)をするためには、公正証書にしたい契約や合意
の内容等をまとめた文書と、嘱託する当事者本人の身分を証明するための資料を事前
に準備する必要があります。

1.公正証書の内容に必要な文書の準備

  公正証書として作成してもらう文書の内容(契約・合意内容等)の大略を当事者間
  で決めて文書にしておく必要があります。
  また、文案の作成を行政書士やその他の第三者に依頼する場合も、事前に十分な打
  合せが必要です。

2.身分確認資料の準備

  公正証書を公証人に作成してもらうためには、当事者又はその代理人が公証役場
  に出頭し、公証人の面前で内容を説明することになりますが、その際、出頭した者
  がまさしく本人であるか否かを証明するための身分確認の資料の提出が求められま
  す。

  身分確認の資料は、当事者本人が出頭する場合と代理人が出頭する場合、当事者が
  個人の場合と法人の場合で異なります。

  当事者本人が公証役場に出頭する場合》

     (1)当事者が個人の場合
     ①本人の印鑑証明書と実印
     ②運転免許証と認印
     ③パスポートと認印
     ④住民基本台帳カード(顔写真付き)と認印

     上記①〜④のうち何れかを持参します。

   (2)当事者が法人の場合
     ①代表者の資格証明書と代表者印及びその印鑑証明書
     ②法人の登記簿謄本と代表者印及びその印鑑証明書

     上記①②のうち何れかを持参します。

  《代理人が公証役場に出頭する場合》 

   (1)当事者が個人の場合 

     ①本人作成の委任状
      ・委任状には本人の実印を押します。
      ・委任状には契約内容が記載されていることが必要です。
       (白紙委任状は認められません
      ・委任内容が別の書面に記載されているときは、その書面を委任状に添付
                して契印します。
     ②本人の印鑑証明書
     ③代理人の
               a.印鑑証明書と実印
               b.運転免許証と認印
               c.パスポートと認印
               d.住民基本台帳カード(写真付き)と認印
         (上記a.〜d.のうち何れか)

     上記①②③の全てを持参します。

    (2)当事者が法人の場合

      ①法人代表者名の委任状
      ・委任状には代表者印を押します。  
      ・委任状には契約内容が記載されていることが必要です。
       (白紙委任状は認められません
      ・委任内容が別の書面に記載されているときは、その書面を委任状に添付
             して契印します。
     ②代表者の資格証明書と代表者印の印鑑証明書
      又は法人の登記簿謄本と代表者印の印鑑証明書のどちらか
     ③代理人の
               a.印鑑証明書と実印
               b.運転免許証と認印
               c.パスポートと認印
               d.住民基本台帳カード(写真付き)と認印
         (上記a.〜d.のうち何れか)

     上記①②③の全てを持参します。

    (注)印鑑証明書、商業登記簿謄本、資格証明書が必要な場合は、書類作成後
      3カ月以内のものに限ります。

公証人による公正証書作成の手順は、概ね以下の流れ図の通りになります。

 受    付

 

 当事者の身分確認資料の調査

  

公正証書作成に必要な内容の聴取 

 

公正証書の作成

公証人による公正証書の読み
聞かせまたは閲覧

 

公証人と列席者の署名押印

公正証書原本の保存と正本・謄本

 の交付

1.公証役場に行く前に

   ①事前に公証役場に電話で問い合わせ、必要な書類や手続の確認をします。

   ②通常、公証役場への出頭は、事前に電話で予約し、指定された日時に出頭する
  ことになります。

   ③公証役場には、当事者双方が揃って出頭するのが原則ですが、代理人に依頼す
  る場合は、代理人と相手方の当事者又は双方の代理人が揃って公証役場に出頭
  します。
  一人の代理人が当事者双方の代理をすることは民法で禁止されているためでき
  ません。(双方代理の禁止)

2.受  付

  当事者(代理人による場合は代理人)は、本人の身分確認資料等を持参して公証
  役場に出頭します。
  受付では、公正証書の嘱託に来たことを伝えて受付を受け、順番を待ちます。


3.当事者の身分確認資料の調査

     公証人は、当事者または代理人が持参した身分確認資料の提示を受け、当事者等
   の身分確認を行います。

   当事者が個人の場合、法人の場合、代理人による嘱託によって提示する身分確認
   資料は異なります。(詳細は、前述の身分確認資料の準備を参照ください。)


4.公正証書作成に必要な内容の聴取

     公証人は、当事者から公正証書の内容となる法律行為(例えば、金銭消費貸借、
     賃貸借、売買等)の具体的な内容を聴取し、疑問の点があれば補充して質問しま
     す。
     公証人は、この聴取において、その内容が法律行為として違法性はないか、当事
     者にその法律行為をする能力があるかなどの十分なチェックを行います。
   従って、公正証書としての安全な内容が確保できるます。

  『実務では当事者は、事前にファックスなどを利用して公正証書にしたい内容を
   公証人に通知し、公証人はこれを検討して必要があれば補正、修正をし、これ
   を当事者にファックスで通知して了解を得るなど、事前の調整が行われるのが
   実状です。』

5.公正証書の作成

  公証人は、聴取した内容から公正証書を作成し、それに基づいて、原本、正本、
  謄本を作成します。


6.公証人による読み聞かせまたは閲覧

  公証人は、出頭した当事者又は代理人に対して、作成した公正証書の内容を確認
  させる手続として、その内容を読み聞かせるか閲覧をさせて、内容を確認させま
  す。


7.公証人および列席者の署名押印

  公正証書の読み聞かせ又は閲覧が終了すると、公証人は、列席者に対し公正証書
  原本の指定した箇所への署名押印を求め、公証人も同様に署名押印をします。
  (列席者とは、ここでは出頭した当事者又は代理人のことです。)


8.原本の保存と正本・謄本の交付

 (1)公正証書原本の保存

    列席者の署名押印され、公証人の署名押印がされたものが公正証書の原本に
    なります。
    公正証書の原本は、紛失や偽造等を防止するために公証役場に原則20年間
    保存されます。
   (例外規定に該当する公正証書については、公証人の指示により20年以上
    の長期間保存されます。)

 (2)公正証書の正本・謄本の交付

    公正証書の原本に基づき、正本と謄本が作成されます。
    正本は権利者に交付され、謄本は義務者に交付されます。

    従って、例えば債務弁済契約の公正証書の場合は、正本を債権者、謄本を債
    務者にそれぞれ交付されます。

    また、売買契約や賃貸借契約のような双務契約の公正証書については、双方
    に正本が交付されます。
    

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