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公正証書は、国の機関である公証人が、厳格な手続を踏まえて作成した公文書です。
公証人の作成する公正証書に対して、一般に私人間で作成される契約書や覚書や約定書等の書類は、私文書または私署証書といわれています。
公正証書には、私文書に比べ、次のような効力があります。
公正証書の証明力
公正証書の執行力
公正証書の安全性
心理的圧力としての効力
以下に各効力について説明します。
公正証書は、国の機関である公証人がその権限に基づき、厳格な手続きを踏まえて作成
することで公文書となるため、例えば、民事裁判の場に公正証書を証拠として持ち出し
た場合、裁判官は直ちにこれを拠証として採用できることになっています。
一方、私文書の場合は、その文書が正しく作成されたものであることを、提出した側が
証明しなければこの文書を証拠として使うことができません。
公正証書を作成する場合、これを公証人に嘱託(作成依頼)する当事者は、身元を証明
できる物(印鑑証明書と実印または、パスポート、運転免許証等)を公証人に提出し、
公証人はその者の身元を確認したうえで公正証書を作成し、当事者は公証人の面前で公
正証書の内容を確認し、署名・押印することが義務付けられています。
また、公正証書にする内容が法令に違反したり、契約等に無効や取消しの原因(詐欺、
強迫、虚偽表示等)があるときには公正証書は作成することができません。
公正証書にする内容の適法性、有効性が公証人によって確保されることになっていま
す。
しかも、公正証書を作成する際に、当事者が公証人に対して嘘の依頼をして公正証書
を偽造させたときには、刑事罰(懲役5年以下または50万円以下の罰金)に処せら
れることになっており、虚偽内容の公正証書が作成できないよう防止措置がとられと
います。
このように、公正証書は私文書に比べ、高い証明力を持っています。
例えば、取引において契約当事者の一方が約束通りに債務を履行(金銭の支払いなど)
せず、話し合いが拗れて解決が難しい状況になった場合、強制執行という手段で相手方
の財産を差し押さえて、そこから債権の回収を図る方法があります。
通常、この方法で債権回収を図るためには債権者は裁判を起こし、勝訴判決で強制執行
が認められる判決が確定しなければなりません。
裁判でこの確定判決を得るまでには時間もかかり、またその費用も馬鹿になりません。
ところが、公証人が作成する公正証書には、裁判所の確定判決と同じ執行力を持つもの
があります。
公正証書に基づく強制執行よって債権回収を図れば、時間および費用が節約できます。
但し、すべての公正証書に強制執行が認められるわけではありません。
強制執行できる公正証書には、次の2つの条件が備わっている必要があります。
■ 公正証書に記載された債務内容が「金銭の一定額の支払いを約束した場合、
代替物もしくは有価証券の一定の数量の給付を約束した場合」であること
■ 公正証書に債務者が「強制執行されてもかまわない旨の記載(これを執行
認諾約款といいます。)」があること
ところで、強制執行できる条件を備えた公正証書が有るからといって、債権者が直接に
債務者に対して強制執行できるわけではありません。
強制執行は法律に従って適正に行わなければなりませんので、執行機関として裁判所
と執行官が法律で定められています。
債権者が強制執行によって債権の回収を図りたいときは、一定の手続に従って裁判所
または執行官に申立てをして、強制執行してもらうことになります。
裁判所または執行官はこの申立てを受けて、強制執行の手続を進めていきます。
強制執行の申立て機関が裁判所になるか執行官になるかは、債権者が債務者のどの
財産に強制執行を申立てるかによって決まります。
目的の財産が不動産(土地・建物など)、債権(預貯金など)なら裁判所に、動産
(家財など)なら執行官に申立てることになります。
既に「1.公正証書の証明力」で説明した内容と重複しますが、公正証書にする内容が
法令に違反したり、契約等に無効や取消しの原因があるときは、公正証書は作成するこ
とが出来ません。
また、公正証書の作成を依頼する当事者の身元は、印鑑証明書、パスポート、運転免許
証等で公証人により確認されます。
公正証書は、作成の段階でこのようなチェックを受けますので内容的安全が確保されま
す。
更に、作成された公正証書の原本は、公証役場において厳重に保存(原則20年間)さ
れます。
これにより、公正証書の紛失、盗難、偽造、変更を避けることができます。
公正証書の作成を依頼した当事者には、原本に基づいて作成された正本または謄本が
交付されます。
当事者が正本または謄本をを紛失しても、公証役場に届出れば、いつでも、新たに正本
または謄本を作成をして貰えます。
公正証書には、証拠としての優れた効力があります。
また、公正証書の債務内容が「金銭の一定額の支払いを約束した場合」で、かつ公正証
書に「執行認諾約款」の記載があれば、債務不履行となった場合、直ちに強制執行がで
きるわけですから、公正証書を作成した債務者に対しては、公正証書どおりに履行しな
ければならないという心理的な圧力になります。
また、公正証書は、裁判での有力な証拠となり、債務者としては裁判で争うのは困難で
あるということを自覚し、できるだけ約束どおりに履行しようと云うことになるでしょ
う。
このような、債務者に対しての心理的な圧力も公正証書の重要な効力であり、公正証書
を活用することで、かなりの程度、紛争を避けることができます。
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