自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑があれば、自分でいつでも作成できる遺言です。
費用も殆どかからず、他の方式のような証人や立会人も不要です。
遺言の内容も存在も、誰にも知らせる必要はありません。
「遺言の内容も存在も、誰にも知られたくない」と考えておられる人に向いている遺言
方式と云えます。
1.自筆証書遺言作成上の注意点
@ 自筆について
自筆証書遺言は、遺言者本人が、遺言の全文はもちろん、日付、氏名を自書し
て、これに押印します。
A 日付について
日付は、年月日を正確に自書する必要があります。
例えば「平成21年4月吉日」等と書いた場合、吉日を特定できないため、
無効になります。
B 印鑑について
押印する印鑑は特に制限が無いので、認印でも問題ありませんが、実印が
あるのなら実印を押印すべきです。
C 遺言の内容について
遺言者個々の状況や思いもあって、内容はケースバイケースだと思いますが、
次のことには留意して作成する必要があります。
● 遺言書であることを明確にするため、タイトルは「遺言書」又は「遺言
状」とします。
● 遺言の内容に遺言者の心情などが入り過ぎると、遺言そのものが分かり
難くなります。
内容は、法的に必要な遺言事項に限定して、明瞭かつ簡潔に整理して記
載します。
● どの財産を誰に相続させる又は遺贈するのかを、明確に記載します。
D 遺言書の訂正について
変更防止のため、遺言書の訂正(加除・変更)の仕方については、決まりが
あります。
訂正の仕方が間違っていると、折角作った遺言書が無効になってしまう危険
があります。
民法では、「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、
これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を
押さなければ、その効力を生じない。」(民法968条2項)となっています。
2. 自筆証書遺言として認められないもの
文字通り、自筆ですので、次の方法で作成した遺言書は自筆証書遺言とは認め
られず、無効になります。
● パソコン等で作成した遺言書
● 遺言者が口述した内容を、他人が筆記した遺言書
● 遺言者の口述した内容を、録音テープに記録したもの
● 遺言者の口述した内容を、ビデオテープやDVD等に映像記録したもの
遺言者が自筆困難な状況にある場合(病気などで)には、公正証書遺言など他
の方法を選択された方が良いと思います。